繰り返す『Forest』論

2chのForestスレで画像の話題が挙がっていて、アップローダを見損ねた私は気になってたのだが、再アップされていて、何かと思ったら会報FCだった。

これはライアーソフトファンクラブ会報「月刊うそ」11号に載っていたもの*1だ。ライアーは今も、新作の一番最初のアナウンスを、FC会報で行う。この『Forest』もその例に漏れなかった。
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これを最初に見た時は衝撃的だった。在ったのはこの見開き2ページ。その他には何の情報も無い。
順番として、次作の製作は星空めてお。それまでライアーの「当たり」作品を作ってきた人が、次にこんな作品を持ってきたということ。この独特の雰囲気の作品を。
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そして、今見返せば、ここにある素材は、かなりの割合で本編で使用していない。包帯を巻いた黒いアリスや科白だけでなく、背景の写真も本編で使用していない者が多い。一見本編と噛み合うような科白も、細部がちょっとずつ異なるはずだ。
この『Forest』は、遅筆と言われる星空めてお氏が、抜群の完成度をもって完成させた作品だ。それだけ、シナリオの出来は早かったのだと思うが、その編集の過程で抜け落ちたのか…それとも、最初から「そのつもり」でこれらの素材を用意していたのか。
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というのも、これらの科白が、恐ろしいまでに本編を象徴しているのだ。

「お話としては、決してお終いにならないね。
…だけど彼らは登場し、やがて自分の役割が済むと行ってしまう。
私たちの役割も、そのうちお終いになるだろうよ」

「じぶんが出てくる話だよ、そんなクマなんだもの。ウィニーって。」

「それ、ぼく?」
「きみさ」

相当なメタゲーである今作を、さもすると本編以上に象徴する。
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それでいて、核となる文句はここに在る。

影よこたわる国、罪都 新宿につなぎとめられた、
5人の仲間の織りなす、絶望と闘いのタピストリ

「私はアリス。さあ、お話を聞かせて。」

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ここまで示しておきながら、本編の初回プレイ時の衝撃は如何なる作品とも比べようがなかった。なんて所業。しかも、その衝撃は、本編で本当に語るべき内容の前段に過ぎない。なんて奇跡。

*1:「月刊うそ」は季刊誌である。