ハッピーエンド論・実例

ライアーソフト公式ファンブック ぼーん・ふりーくす!購入。
まあこんなモノかな?私はどーやってもこの作品の音楽を抜き出せなかったので*1、OP&ED曲はありがたかったです。
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興味深かったのは、シナリオ&企画原案・睦月たらら氏とライアーソフト代表・山原久稲氏に、原画・櫂人氏を交えた対談でした。出版物の引用は流石にマズいのですが、昨日の話如実に示す内容だったので…。以下、『ぼーん・ふりーくす』へのネタバレを一部含みます。

(抜粋)
山原「最初に企画書を見たときは正直売れないんじゃないかって思いました」
櫂人「僕の絵でいいの?って感じだったんですよ。ものすごいシリアスな話だと思って」
睦月「特別シリアスにしたつもりはないんですけどねえ…何だろう」
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山原「ライトな部分を全面に押し出していったんですよ。言い方は悪いですけど、ユーザーさんを騙そうという意図もありました。彼の書くシナリオが鬱になることはわかってましたから(笑)。いままで彼が作ったゲームで、カラっと爽やかに終わったゲームはありませんからね。必ずイヤ〜な気分にさせて終わる男なんで(笑)。」
睦月「妹とイチャイチャするゲームってのは、間違いじゃないですから。しかし、どこが(雑誌の書いた)ハートウォーミングなのかは、未だにわからない(笑)。あと、救いのあるエンディングを入れるかも悩んだんですけどね。いらないとも思いましたが、今回は回りに負けて入れてしまいましたよ。」

睦月たらら氏は、上のコメントを読む限り、この『ぼーん・ふりーくす』のシナリオを書くにあたって、特段の「シリアスさ」を意識していないことが窺えます。それはこの作品だけじゃなく、今までの他の作品*2についても同じような感じです。
ライアーソフト代表・やんばる氏は、もともと広報担当だった人です(たぶん今も)。つまり、彼は原画やシナリオを手掛ける、いわゆる「クリエイター」出身ではない人。シナリオ的な部分については、未だに櫂人氏の側に近いのかも。そんな、「外側」からシナリオを見る人の立場*3からは、睦月氏はシリアスとか鬱を書くライターに見える…ようです。
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これは私の一方的な想像ですが、ライターにとってみれば、この『ぼーん・ふりーくす』という作品の展開はなんの疑問もなく「必然」なんですよ。ウラシルというヒロインの存在と、作品のあの設定があれば、行き着く先は決まってくる。実際、この作品で圧倒的に光るのは「クローンウラシル生存エンド」です。振り返れば、あの設定から行き着く先は、まさにここがメインであるはず。睦月氏の頭にある「救いのあるエンディング」はおそらく「両ウラシル生存エンド」のことだと思いますが、私も、「これは本当のエンドではないのかな〜」とはちょっと感じていた部分でもありました。
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逆に言えば、そのライターの真意はなかなか「外」に通じにくい。今回の件にしても、ひょっとすると、原画の櫂人氏はさておき、代表である山原氏にも、完全には通じていないのかもしれません。
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たぶん、私は、エロゲレビュアーを僭称する人達の中でも、有数の「ライター側」に近い見方をしている(しようとしている)人だと思います。
エンドの「点」ではなく「式」を読みたがる私が、よく「ライターの意図」について言及するのは、必然的なんですね。その作品の「方程式」を読み取る最も完結な方法は、製作者の真意を知ることですから。逆に、「式」は、よほどの偶然じゃない限り、「製作者が立てた」ものですから。両者はイコールですね。
もちろん、私が読み取った「式」には、数々の誤りが含まれているでしょう。当のエロゲライターにしてみれば苦笑かもしれません。でも、でも、たま〜には、私がその作品を「読んだ」内容をライター側が見て、「その通り」と言っていただけるモノもあるんじゃないのかな…あるかもしれないなあ…あったらいいなあ…と。そーいうのって、製作者にとっては、嬉しくもあり、同時に悔しくもあるのかもしれませんけど。

*1:以前、2005/11/24の日記でとりあえず検討した通り、私的複製に限っては音楽の吸い出しは合法という見解に立ってます。

*2:この後に、「彼の書くシナリオだと、振られた女の子がその後ストーカーになったりする」という山原氏のコメントがあります。私の記憶が確かなら、そんなヒロインは伊勢きりこ(『腐り姫』)しか知りません。そうか、あれ、睦月氏だったのか…。

*3:ただし、ライアーソフト次作『蒼天のセレナリア』のプロデューサーは山原氏だそうです。なるほど、過去のライアー作品と印象が違うのはそのせいか。