レビュアーの雑言。私以外の人はあまり読む意義がないと思います。

レビューに何を書くかってのは、当たり前だが人それぞれなんだろう。グラフィック・シナリオ・システム・音楽を等しく評価して初めてレビューだと思う人もいるだろうし、「ある意味」それは正しいだろう。
で、私が自分のレビューに何を書いているかというと…そのエロゲーコンセプトなんだろうな。
 :
要はその作品が「こういう作品」という印象。そこなのだろう。
私はよく、全てを書かないことがある。特にBGM・システム、そしてエロシーンなんかについて、全く触れていない時がある。それは、そのエロゲーにおいてそれらの要素がその「コンセプト」に何の影響も与えていないからだ。
 :
例を挙げてみる。
終末の過ごし方』という、私の中でかなりのレベルの名作がある。レビューはそれなりに長いが、その中で、「登場人物のほぼ全員がメガネ」という点に全く触れていない。それは、まさにこの作品の「コンセプト」を「来週末に終末を迎える世界」という作品設定の一点に見ているからだ。
もちろん、この作品はこのコンセプトに応えている。「終末を迎えても」いつも通りに明るく生きる歌菜、「終末を迎えることによって」同じ感情を抱く人に出会ったいろは、「終末を迎えるにあたって」自分に素直になれた緑、そして「終末を迎えるから」こそ本音を伝えることができた知裕と香織。全てのシナリオは同じ方向性を向いている。その果てに在るのが、まさにこの作品のコンセプトだ。
そして同時に、ここからが大事なのだが、「全員がメガネ」という登場人物設定は、このコンセプトに全く影響を与えていない。だが同時に、「来週末に終末を迎える世界」というコンセプトを決して邪魔しない。だからこそ、「全員がメガネ」は「無視できる」。
もしこの作品に、終末が回避されるシナリオが追加されていたら?それは、「メガネ」とは同じくはいかない。作品のコンセプトと「対立」するからだ。終末回避シナリオは、4人のヒロインのシナリオとそこへ至る日常描写と「対立」してしまう。だから、私はその終末回避シナリオを「拒否」する。無視することすらできない。それは作品全体のコンセプトを汚すから。
 :
別にコンセプトは最初の期待と同じである必要は無い。むしろ正反対くらいの方が反動で好印象となることも多い。
中コンセプトが複数存在してもよい。だが、中コンセプト同士を矛盾させずに並立させ統括する大コンセプトの存在は絶対不可欠だ。
 :
その「コンセプト」が明確に見え、統一された作品の評価が高まるのは、私の嗜好上しょうがないことだ。
もちろん、特定コンセプトの一言で隅から隅まで語り尽くせるエロゲなんぞ流石に存在しないだろう。しかし、一見してコンセプトに反する要素については、何らかの「理由」が欲しい。「コレが無ければ全体のバランスが取れない」といった程度で構わない。「不要」なら「不要」である理由があればよい。商品としてのボリュームの補完くらいの意味で良い。だが、その際に、「これはどーでもいい要素ですよ」くらいのポーズは欲しい。『家飛!』で、残りの4人のエンドを無視して1つのエンドを褒め称えられる理由は、あの作品が既に作品設定と共通パートからその1人のヒロインのために作られていると読めるからだ。
 :
そうすると、意外と邪魔なのが「エロ」なのだ。これはエロゲーには無くてはならない。だけど、作品の中枢コンセプトが何らかの「テーマ性」である場合、「じゃあなんでエロシーンが存在するのか」という点を「説明」するのは非常に難しい。それを最も完璧な形で乗り越えたのが『腐り姫』なわけだが。
 :
同時に、複数エンドの処理も私にとって鬼門であることは想像に難くないだろう。昨今のエロゲは4・5人は攻略ヒロインが居るのが普通で、そのそれぞれのエンドをどうまとめ上げるかは難しい問題である。
例えば『お願いお星さま』という作品を私が好きなのは、真朋エンド・ひびきエンド、そしてサブヒロインを「攻略できない」点が、あの作品のシナリオに合致するから。文香や桜庭、ましてや上月はあの作品において「攻略される必要はない」ばかりか、「攻略されることが作品自体のコンセプトを失わせる」と思うのだ。
 :
まあそうなると、業界でただ一人と言ってもよい、単一ヒロイン単一エンドを貫き、同時に作品全体の企画原案を担った星空めておってクリエイターが私の嗜好に合うのは当たり前の話。
まあ、おそらく私も、「好きな作品の好きな理由をコンセプトとして後付けしている」という意味合いが強いかもしれないが。
 :
ただ、当たり前のことではあるのだが、作品中での矛盾はなんとかしてもらいたい。その「矛盾」を内包できる作品は強いのだが、それを最初から踏まえて作れる作品は数少ない。少なくとも、設定・各結末・全体像くらいのアウトラインはまずしっかりと固めてから作品を作って欲しいと、一エロゲーマーの希望。