自意識過剰ならよいのですが

そもそも『Forest』への言及は私がきっかけ(大元は竹箒日記ですが)なような気もしますので、たまにはフォローに回りたいと思います…。
http://blog.livedoor.jp/april_29/archives/50216346.html
http://d.hatena.ne.jp/simula/20051126
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まず最初の前提として、『hollow』は当たり前に自己矛盾を抱えている作品だということ。『歌月十夜』は別のライターの執筆であることをはっきりと明記していて、ライター間での矛盾は初めから問題視されていませんでした。ですが『hollow』は、複数のライターが何処を書いたのかを明記していません。
加えて、きのこ氏自身が、「矛盾」を書くのを厭わないライター…だと思われること。『月姫』が同一設定による完全枝葉分岐の物語であり、5つのシナリオが同時並立し得ない点。その中で順序を付け、琥珀エンドという日常を断ち切るエンドで締められるにもかかわらず、『plus disk』および『歌月十夜』という、きのこ氏自身による「続き」が作成されていること。『Fate』本編も同じく順序を持つ枝葉分岐シナリオですね。
これらを踏まえて、アンリマユの「飽きた」発言を書いたきのこ氏が、最後にバゼットを衛宮家に向かわせて「あたかもまだ物語が続くかのように」締め括ったとしても、彼の前歴からすれば不思議ではないのかな〜という気もします。
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その辺の「境目」や「本音の順序」は、それこそ作っているヒトじゃないとわからんかな〜という気はします。なので、実にこのFDは語りにくい。
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私は『hollow』の内容について言及することはなるべく避けたいので(何せあんまり読み込んでない)『Forest』との比較の整理に移りたいのですが…私が言う『Forest』の現実味を説明するのは難しいです(おい)。
この両作品、「作中の何かを否定する」という意味は共に持つと思うのですが、行き着く先が違うのかな、と。私の印象では、『hollow』の結果戻る先は『Fate』本編で、『Forest』の結果戻る先は、私達プレイヤの生きる「現実」なのではないでしょうか。
『Forest』のラストで雨森が歩くのは、「私達と同じ現実」だと思うんです。それゆえに、あの場面は「新宿南口」でなければならないと思うんですよ。
hollow』はこの「現実」にまで回帰できるかというと…やや弱い。それをするということは、セイバーや遠坂凛が現実には存在しないと自覚することです。『Forest』の凄いところはそれをしてしまうところだと思うんですけど、それを、プレイヤーに負の感情を抱かせずにやるのは本当に難しい所業。
アンリマユを「読めば」、そう読めないことはないと思います。でも、流石に『Fate』本編って、ファンがそこまでして欲しいと思っている作品ではないと思うんですね。実際、ラストでバゼットが生き返って衛宮家にやってきます。「日常」は「終わり」を告げられません。
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なので話を戻すと、私的にはsimulaさんの「楽園否定」という言葉の方が頷けるかな、と。『Fate』本編は「楽園」ではないと思います。けっこう壮絶な物語ですしね。そんな、『Fate』本編に回帰するという意味での「自己否定」というのが私の印象です。
アンリマユが士郎に憧れることも、「第二部」の価値を改めて示したような気がしました。
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9791さんの今回の四論点を私がどーこう言うなら、
① Forestとの比較論に対して
『Forest』とは帰るべき「現実」の意味合いが違うかな、と。「作中の現実」と「現実の現実」との差と言えるでしょうか。どちらが好みかは人それぞれですし、『Forest』が後者を描けたことは「奇跡」だと私は思います。
hollowの世界観(テーマ内包)について
これについては先の通り、どちらかと言えばsimulaさん寄りです。
hollowの主人公について
これは重複させることが演出じゃないですかね?
④ 前作との関連性について
この『hollow』を通して思ったことは、『Fate』本編に微塵も手を触れてないということ。全く「別物」だと思うんですね。設定はいいとこ取りで(笑)、「あり得たかもしれない物語」と言ってしまう完全同時並行性。例えば『モエカん』のような「リライト」ではなく、『ねがぽじファンディスク』のようなシナリオの「追加」でもない、本当の「別物」じゃないかと。初期設定すら作り変えてます。「“我が儘し放題な”物語」という意味はこのあたりでしょうか。
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まとめれば、「『hollow』は『Fate』に還る」ということでしょうか。当たり前か(笑)。
そうすると、お二人の議論の齟齬は、そもそも『Fate』本編とは何なのかという問題かもしれません。『Fate』本編は「空想」「現実」どちらを描いた物語なんでしょうか。
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私は『Fate』本編がそこまで「現実」を描いているとは思ってないんですよ。あの作品は言ってしまえば奈須きのこの[森]そのものであって、彼はまだどっぷりとあそこに浸かったままですからね(笑)。
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以上、どーしても自分の意見になっちゃうんですが、もし沈静化に役立たなかったらすいません…。
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最後に。
私の中での『Forest』は、世界観や物語序中盤の[森][リドル]の描写だけでなく、テキストの作り方・管理、グラフィック、BGM、ボイスの使い方、そして物語自体の立ち位置や最終的なテーマ性に至るまで、徹ッ底的にオリジナルな作品です。エロゲ界を日本に例えるなら大和堆上空1万メートルくらいの作品です(笑)。そんなワケでどーしようもなく人を選ぶ作品なので…ご注意を。