久しぶりのエロゲ徹夜 AM5:00

群青の空を越えて』(light)
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最初にこの作品の紹介を見た時、「おいおい」と思わずにはいられなかった。これほど「設定」の破綻した作品も珍しい。エロゲのシチュエーションも、ここまで陳腐なレベルにまで達してしまったのか、と嘆かずにはいられなかった。
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「お前、単に戦闘機を描きたいだけとちゃんうんか」と。
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日本が東西に分かれて戦争する…はずがない。出来るはずがない。
こんなん、足と足を繋がれたままボクシングをするようなモノだ。百里基地なんて役に立つのか?西を離陸した戦闘機相手にどれだけ早く離陸しても、何処で迎撃できるっていうんだ?
そもそも日本という無資源国家で、戦闘機による戦闘がどれだけ(量的に)可能だというのだ?私はこの作品の体験版をプレイしたのだが、予備役の学生パイロットに、授業の合間を使って緊急離陸訓練を行なっている。そんなに、石油燃料の備蓄があるのだろうか?この戦争は、別に昨日今日始まったワケでもないようだが、まさかそんな状態の日本に石油を供給する物好きな海運会社&石油メジャーが存在するのだろうか?
そもそも、そんな状態で互いの生命線となるのは石油関連施設だろう。もしこれが「本気の戦争」なら、お互いにお互いの沿岸石油基地目掛けて総力戦が繰り広げられているはずだ。こんな近距離でである。陸続きだから、山を縫って工作員が紛れ込むだろうし、石油施設に直接でなくても、送電線等を狙う等、策はいくらでもある。どう考えても、戦闘機による空中戦のような「綺麗な戦争」にはなり得ないのだ。
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まあ、気持ちはわからんでもない。日本の周りには「地勢的に」戦争を起こすのに適度な国家はいくつか存在しているのだが、それらの国相手に仮想とはいえ戦争を仕掛けたら、「シャレにならん」。なぜなら、状況さえ整えば本気で戦争になってもおかしくない国だから。いくらエロゲとはいえ、それは「描けない」。(向こうは描いているようだが、同じコトをこっちもやると収集つかなくなるよねえ…。)
また、この作品を作ったヒトがそこまで諸外国のことを知っているとも思えない。知らないモノは描けないから、そうなると…唯一知っている「日本」を敵とするしかないのかもしれない。
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まあ、今までエロゲをいろいろ見てきたツモリだけど、ここまで現実感の無い設定は初めて見た。こんな作品、名作になるはずが無い…はずだ。
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以上、この作品をプレイする前の印象
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さて、ここまで書いてナンですが、この『群青の空を越えて』を購入しました
だって、こんな作品なのに、評価があまりに高いんだもの…。これだけ???な点が目に付くのに、なんでこんな点数が付いているのか、それを考えると夜も眠れません(笑)。
単にErogameScapeの点数だけじゃなく、ある程度信頼しているとあるレビューサイトで今作を褒めていたのを見て決めました。その人、この、設定部分については微塵もフォローしてませんでした。それで、余計に興味が沸いたんです。だって、それなのに、総合評価が高いんだもの…。つまり、それを補ってあまりある「何か」あったってコトじゃないですか?
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さて、重要な点ですが、「評判に騙された」って表現は完全に間違っています。
「評判」「評価」が誰にとっても絶対でないコトなんて当たり前の当たり前で、それがイコール自分にとっても当てはまるとは限らないなんて言うまでもない「常識」です。
「評判を信じるか」の責任は、全て「自分」にあるはずです。評判の良い作品を購入して、自分にとってダメだったら、それは「評判に騙された」のではなく、「自分」が「評判を読み損ねた」ただそれだけです。自分の責任です。
ここまで宣言しましたので、もしこの作品が私的にイマイチな作品だったとしても、誰も恨まないようにしたいと思います(笑)。
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(現在AM5:30 開始から7時間ほど経過)
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とりあえず一ルートクリアしました。エロゲで徹夜は久しぶりです。
結論は…どちらかと言えば「否」。今までプレイ続けたことからわかるように、単純な凡作ではないんだけど。
以下ネタバレあり。
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クリアしたのは若菜ルート。
結局、中途半端だ。
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グリペンが描きたい」ってのは、オフィシャルの作品紹介から見て取れたし、設定資料集にもホントにそのまま書いてある(笑)。
なら、空戦場面がテキストの垂れ流しってのは勿体ない。あそこは文章じゃなく、視覚・聴覚的演出が要るトコロだ。この辺、私のこれまで経験してきたlightというブランドの「悪さ」をそのまま引きずった感じがする。このブランドは、ホントに演出が弱いからなあ…。
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ここまで一気にプレイしたように、よく出来ているところはある。文章のリズムなのかな?読み易さはかなりのレベルに達していると思う。
ただ、若干、メリハリに欠けるかな。これは演出の弱さも原因なんだろうけど。また、「最後の一文が余計」と思える箇所が散見されたのも…。
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一番気になったのは、「整合性の無さ」だった。これは、前述の作品全体の設定よりももっと細かいレベルでの話。フローチェックを全然していないんじゃないか?
例えば、「袖のボタンが取れた」のに立ち画は半袖だったり、それまで部屋を散らかしていたはずのヒロインが主人公の部屋の汚さに怒ったり、それまで無愛想気味だったヒロインが突然愛想よく話しかけてきてそのくせ何気ない一言に怒り出したり、テキストの空の色と背景の空の色が全然一致しなかったり、ヒロインと二度目のHをする前に「何度もHしている」というテキストが出たり、そーいうのがホントに多い。
一度作品を通して読み返せば、誰でも気付く不整合があまりに多すぎる。
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『かもめ』の使い方も疑問符が付く。言わば、この戦争モノには合ってないだろう。これを使うなら、主人公は英雄か戦争犯罪人かどちらかの道を歩ませるべきだったと思うののだが、いかがだろうか。
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で、肝心の(?)物語設定についてだが…。トンデモだ(笑)。
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市民はおろかインフラ関連をまったく攻撃しない戦争。
国連駐留軍が日本に留まっており、停戦状態となっている中で日々続く空中戦。
そんな状況下で、小競り合いレベルではなく、恒常的に人が死んでいる。
なぜか太平洋側でしか起こらない地上軍同士の衝突。
いつの間にか首都圏に数千人規模で侵入している関西軍。
なのに微塵も傷付けられない石油パイプライン。
なのに工作員微塵も紛れ込まない筑波基地。
テレビがありネットがあるのに起こるデマ。
東京電力に頼まないと電力の遮断もできない軍隊。
そんな中でほとんどの学校で学徒動員が行なわれる。
「戦死者は意外と少ない」との発言。
「結局、日本人は日本人を殺さない」との発言。
なら、なんでこんな設定を…。
etc…書き出すと、たぶんキリが無い。
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結局、「戦争」の必然性が全〜然感じられないんだよなあ…。
だから、戦争を語ることに何らの説得力が無い。そうなると、戦争の意味について考えるシーンというのはまったく不要で、それこそ、無邪気に空中戦をやっていればよかったのではなかろうか?ぶっちゃけ、ACECOMBATの方が面白いと思う。
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はっきり言って、最後の戦いは犬死としか思えない。あの判断を「戦争犯罪」と自ら表現しているワケだが、そうなら、あの判断自体が「間違っていた」というコトをもうちょっと強調しないと、下手をすると若い人が勘違いをするような気がする。
この作品は「グリペンを描きたかった」それだけがモチーフなのだろうから、戦争の肯定も否定も無いのだ。このライターに「戦争を肯定しますか?」を質問すれば、絶対に「No」と答えるはずだ。彼が好きなのは平時に空を駆けるグリペンという存在であって、別にそれが人を殺すことが好きなワケではないはずだから。
なら、元から「戦争」を描く必要は無かったように思える。
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けっこうヒドイですよ、この作品。
戦争被害を意図的に抑えて描きながら、最後に戦争に対する「意欲」みたいなモノを肯定していますからね。それ、やってはいけない戦争美化のような気もするのですが…。
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結論。
私にとって「設定がダメダメな作品がどこまでやれるか」を見極める一つの実験だったのですが、すいません、やっぱり失敗のようです。
シナリオに及ぼす影響が大きすぎたかな?設定に起因するあらゆる発言が苦しいんですよね。また、細部の整合性が全然取れていないので、それがまたこの作品の「何を言っても説得力が無い」という印象に繋がっているのだと思います。この、全体・細部の二段階での「トンデモさ」が致命的のようです。
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今の若い世代って…この作品を読んで何も思わないのかなあ…。