体験版論

皆さんは、エロゲの「体験版」をどのようにお使いだろうか?
今や、体験版の無いエロゲの方が珍しいくらいだ。しかも大多数は、無料で誰でもダウンロードできる。最近はBBの発達で、体験版自体の容量が昔のエロゲ本編並みのモノも増えてきた。
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さて、この私の体験版のプレイのパターンで最も多いのは、「始めて数分で止める」コレだと思う。つまらないモノももちろんそうなるのだが、「面白いと思ったモノ」「購入予定のモノ」も、同じように体験版をほんのさわりで止めることが大半である。
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そもそも私、「体験版をプレイして購入を決めた」作品がほとんど無いのだ。思い出すのは『Fate/stay night』くらいだが、アレは元々『月箱』をプレイして好印象だったからなあ。
ちなみに、「体験版で購入を止めた」エロゲは、数え切れないくらいある。こうなると最早、少なくとも私にとっては、体験版というのは出せば出すほど商業的にマイナスなのだ(笑)。
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どうして私が体験版に惹かれないのかと考えてみる。
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体験版に最も多いタイプは、作品の冒頭部分を切り取ったタイプだ。このタイプの体験版に惹かれたことはまず無いということを、ここで特記しておきたい。
なぜなら、「作品への入り方」って、非常に重要だからだ。
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その作品の最初のセリフって、とっても大事だと思う。
『Forest』『こなかな』『腐り姫』、このトップ3の「入り方」はいずれも独特で、「後から見ればその作品を総括する」そういう入り方をしている。他にも、『家飛!』のような「最初の一言で"読者"を惹きつける」という作品の構成力は必ずその作品にとってプラスになっているはずだ。
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となると、そういう作品の「体験版」ってのは、なかなか作りにくいような気がするのだが、どうだろうか?「体験版」で、中途半端に作品を「味わってしまう」ことは、いざ本編を購入してプレイを始めた時に、その作品に感じる印象が、体験版〜本編プレイの間の「間(ま)」によって薄らいでしまうような気がしないだろうか?下手をすると、その「間」は作品の「先読み」に繋がってしまう。そうなると、「展開の妙」を狙う作品にとっては、「冒頭を見せる」コト自体が致命傷になりかねないのだと思う。
先に『Fate』を体験版で購入決定と書いたが、それが成功したのは、『Fate』があれだけのボリュームのある作品だからだろう。体験版に1時間かかろうと、本編は30時間以上かかるのだから、それは「ほんのさわり」に過ぎない。特に『Fate』は第二部・三部への転換の仕方が秀逸(だと思う)の分、あの体験版部分は本編のプレイ感を微塵も傷付けていないのだ。
最近は、下手をすると体験版でプレイの数割は終わっているのではないかと思える作品も在る。最もアレだった例は言うまでもなく『SEVEN-BRIDGE』。アレは、音声付体験版をプレイすれば、半分以上終わっている(笑)。
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これは独断と偏見だが、「本編の冒頭の切り取り」で体験版を作れるようなエロゲは、大抵、駄作なのではなかろうか。
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もし本気で「構成」を考えるのならば、作品冒頭の切り取りは絶対に止めた方がよいはずだ。例えば『らくえん』は(あれだけ発売が遅れているにもかかわらず)、体験版を完全にオリジナルなモノとして発表している。これはまあ、『らくえん』本編内のあの描写みたいな理由だったのかもしれないが(笑)、あえて意図的に作品紹介等で本編の本質を「隠している」ああいう作品の「体験版」としては、あれが精一杯なのではなかろうか?ある意味、本編を正しく参照してないので元も子もないと言ってしまえばそれまでなんだが…。
(注:『らくえん』も、時系列を上手く使った素晴らしい「入り方」をする作品だ。)

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もし、「構成を本気で考えている」作品の体験版が「本編の冒頭の切り取り」だったら?
その可能性があるなら、本編をプレイするまで、そこに触れるのは避けた方が良いと、私は思う。その方が、「本編のプレイ」が面白くなる。だから私は、興味を惹かれた作品であればあるほど、それを判断した時点で、体験版プレイを止めている。
こうして、私のHDには、ほとんどプレイしていない体験版が積み重なっていくのである(笑)。
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そもそも、「体験版を作ってはいけない」作品というのも、必ず在るはずなのだ。『Forest』に限らず、ね。