何だか根本が間違っているような気がする

ライブドア社長・堀江氏が、広島6区から出馬するという。この話題、反面的な意味で見るとおもしろい。堀江氏の出馬意図を「額面通りに」受け取るなら、彼の行動は微塵も間違っていないと思う*1。むしろ、彼の出馬に対する世間の反応の方が、政界の保守性を感じさせるのだが…。
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>お金の力だけで何でもやれると思っている(亀井氏)
国民の政治に対する期待項目は何か?郵政民営化を抜きにすれば、「景気回復」「年金制度改革」「財政健全化」等が挙げられる。これって、全部が全部、経済の話だ。結局、郵政民営化だって、資金があればどんな弱小局も維持できる。要は、「金」の話だ。
今や、国家に求められているのはイデオロギーでも、軍事力でも、文化発信でもない。単に「日本」という国を如何に富まし、国民という「株主」に如何に配当を行うかに他ならない。日本国:公務員:国民という関係は、もはや私企業:従業員:株主という関係と変わらなくなっているのではないか?「株は絶対に手放せない」のだけれど。
それに最も近いことをやっているのは誰だ?勿論、企業の経営者ではないか?そして、旧来の「政治家」にそれが出来ているのか?
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もちろん、国民には公共サービスに関しての期待もあるのだろう。しかし、公務員を無償で馬車馬のように働かせろというのが市民の究極の願望であり、同時にそれが無理なことは誰もがわかっている。だから、どこかで、なるべく公務員側に与えるモノが少なくなるように、そして公務員に少しでも働かせるように、折り合いを付けなくてはならない。
これって…何かに似ていないだろうか?そう、私企業のリストラと成果主義の流れだ。
現在の企業は、実は従業員の為には動いていない。「法人」としての価値追求が何より一義的であり、「内」に対しては外部以上に厳しくなっているはずだ。それは、「内」に対して甘くすると「外」との競争に負けるという単純な理由。そんな、ドライな人事政策を経験している企業経営者には公務員への引き締めに対する適正があるだろう。
「経済」に関して、企業経営者以上に経験値の高い人物はいない。ましてや、「ニーズを掴むこと」「ニーズに応えること」に関しては、企業経営者は本当に本当のプロフェッショナルだ。もちろん、「応えるか応えないかの取捨選択」も含めて。
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広島6区は、決して都市部ではない。都市部なら堀江氏に有利であることははっきりしているのに、彼は郡部を選んだ。
もし、広島6区の選挙民が堀江氏を選ばずに亀井氏を選ぶなら(もちろんそんな二分論は正確ではないが)、それは何を意味するんだろうか?「郵便局が無くなって欲しくない」から亀井氏を選ぶというなら、それは単に地元のエゴだ。国民って馬鹿だなあ…と思うのだが、結局、「自分」の有利なように、投票結果なんて傾く。
堀江氏の落選は、かえってそんな「選挙民の地元利権意識」を浮き彫りにするような気がする。堀江氏が落選し、亀井氏が「勝利宣言」をすればするほど、内部の有権者も外部の有権者も「選挙区のエゴイズム」を痛感するに違いないと思うのだ。
亀井氏が、広島6区を「地方"効率化"を進める小泉政権vs地元利権」という構図にしたくないからこそ、堀江氏の「人間性」に言及しているような気がするのは気のせいだろうか?
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堀江氏の広島県との関わりの無さを批判する人がいるが、それこそ的外れだ。地元との関わりには、単に地元の利権を守ることが求められているとしか思えない。選挙とは候補者の中で最も日本の政治に役立つ人間を選ぶためのものであるはずで、近い人間だから投票するよというモノではない。堀江氏は、間違いなく、「広島6区のため」には働かないだろう。じゃあ、亀井氏はそうするのか?で、広島6区の有権者は、それでいいと思うのだろうか?
企業経営層の中に、「営業部出身で、営業部の利権を守ろうとする役員」がいれば、間違いなく経営にはマイナスである。彼自身の判断が傾くこともさておき、そうなると、他部門出身の役員も、出身部門の利権をある程度考慮せざるを得ない。そうしないと、バランスが取れない。こうやって、大局的な視点は失われていく…のではなかろうか。
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堀江氏が本気なら、それこそ内閣総理大臣を目指せばよいと思う。
日本で「最も人の役に立てる職業」「最も大きなことができる職業」「最も世の中を変えることができる職業」「最も世の中を変えないことができる職業」は何か?当たり前だが、内閣総理大臣である。究極の話、大多数の願望を最も叶えられる職業は総理大臣だ。
彼は郵政民営化に限らず、何かと「変革」を口にする。それは別に、「彼の事業」にとどまっていない。彼がただ、ライブドアのIT事業の発展のみを求めてきたか?彼は、少なくとも発言としては、非常に「広い」分野に口を出す。それを本気でやろうと思ったら、ライブドアという企業領域を拡大するか、そうでなければ、本気で「政治」の世界に足を踏み込むしかないと思うのだが、いかがだろうか?
そのための現実的な手段として、現在の与党である自民党との接触は有効だろうし、かといって今回は無所属で出馬するということは、郵政民営化以外の項目について自民党と一枚岩でないという彼の主張の一つにも思える。私的には、非常にバランスの取れた選択に思える。
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もちろん、選ぶのは有権者だ。彼の「日本国経営者」としての資質が問われ、それで落選するのならば、それは仕方なかろう。

*1:「額面通りならば」この大前提での話です。