『sense off』(otherwise)中間感想①

成瀬&珠季シナリオまで。
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レビュアー泣かせの作品だなあ…。
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sense off』というタイトルそのものがこの作品の本質なのかも。
この作品は、「物語」としての形を成していないんじゃないか。それは、「描写不足」という意味では微塵もなく、「感覚」を研ぎ澄ました作品という意味で。
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この作品、主人公の視点から語られる割に、それは「一人称」と呼ぶにはちょっと語弊がある。例えば昨日の『こなかな』の場合は、視点に加え感情を全て主人公の立場から描写している本当の「一人称」作品であって、主人公の心境は何ら隠されることはないのだが、この作品の主人公は全てを語らない。そういう意味では一人称とちょっと違う。
この作品は「物語」としてプレイヤーに一方的に全てを与えるというモノではないのかも。「シナリオ」というよりは「脚本」「演出」というか…言葉にはしづらいが…。ライターは相当に練り込んで書いていると思う。「見えない部分」も含め。
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この作品の主人公が、物理と数学に天才的な才能を発揮する一方で、古文や英語に全然興味がないのは、決して偶然ではない。意図的に設定されているだろう。彼は明らかな「理系人間」で、占いとかを微塵も信じないし、全てが三平方の定理のように解決できればと思っている。
だが、ヒロインの考えていることは、そしてライターの考えるこの作品の描写も、多分に「精神的」な世界であり、いわば「文系的」なのだ。だからこそ、この主人公は長々とそれについて「説明」しない。出来ないかもしれない。そういう作品なのではなかろうか。
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なので、エロゲレビューのような「文系」的な形にするのは、非常に骨の折れる作品だと思う…。