ニート肯定論

ディベートの練習に、「自分と異なる意見を擁護してみる」というモノがある。
私はいわゆる「ニート」になろうとは思わないし、価値も認めていないのだが、あえてこの「ニート」を擁護してみたいと思う。
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ニートの増加を批難する声の多くは「このままだと日本は駄目になる」という大人の意見のような気がする。コレを聞くと、いつも「お前らはこんなコトしか言えないのか」と思わざるを得ない。
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確かに、少子高齢化を迎える中、これ以上非勤労者を増やすことは決して日本経済のためにならない。それは間違いない。しかしそれは、これから高齢化社会の中心(?)になっていくであろう、まさに現中年世代にとっての死活問題、つまり、自分の問題としての意味合いが大きいのではないか?そう、決して、ニートになっている、ニート予備軍の若者たちの将来を懸念しての発言ではないのだ。
まずここに、現中年世代の「身勝手さ」を感じずにはいられない。彼らは、自分の将来を憂い、自分の利益が損なわれないように発言しているに過ぎない。
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言わせて貰おう。
彼らはどうして、「社会で働くというコトはこんなに素晴らしいモノなのだ」と若者に示すことが出来ないのだ?
ニート対策として最も挙げられるのは「就職支援制度」「雇用の場の確保」である。そう、いずれも「政府任せ」なのだ。今の中年世代は、若者たちに「働くコトの素晴らしさ」を語る言葉を持っていない。
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こんな中、若者たちが働こうとしないのは、ある意味当たり前の話である。
とはいえ、一昔前は、そうしようともそうはいかなかった。働きもせずに実家でごろごろしているなんてコトを許す親はいなかったからだ。
では、そんな親が悪いのか?甘やかせすぎなのか?
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中年世代のヒトは、考えたコトがないのだろうか?「自分は何のために働いてきたのだろう?」と。
それは、子供を自分と同じように馬車馬のように働かせるためではないはずなのだ。そう、「子供に楽な暮らしをさせる」、このコトが「悪」であるはずがない。そんな考えは目的と行為を取り違えている。
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ほんのちょっと前まで核戦争は現実の脅威になり得たのだが、今ではすっかりアニメのネタにしかならなくなった。これは勿論「良い」ことであり、当時の軍拡競争は既にお笑い種にしかならない。
では、人々は平和になってのどかにみんな仲良く暮らしているのか?実は…そーでもない。軍事に成り代わって政治の中心となった経済活動は、まるであの時の軍拡競争と同じような、血を吐き続ける悲しいマラソンの様相を呈してきた。
しかもそれは、大国間でしか対立のし様が無かった核軍備とは異なり、如何なる国家でものし上がるチャンスがある。昨今の中国を見ればわかるように、貧しい国は労働力コストで先進国に対し優位性を持っており、それが「ハンデ」となっているからだ。つまり、この悲しいマラソンは、次から次へと後ろから他のランナーが追いついてくる。
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日本という国は、いつまで走り続ければよいのだろうか?
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戦後60年、なぜ日本は走り続けたのか。それは「明るい未来と豊かな社会」のために。だとしたら、まさに今の世の中は、そうではないのだろうか?既に私達は、「あの頃の未来」に辿り着いたのではないか?今以上に走り続けることに、意味はあるのだろうか?走ることが目的なのではない。行き着く先が目的なのだ。
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現中年世代はこう反論するかもしれない。「自分たちだけ良ければその後の世代のコトはどうでもいいのか」。それは確かに正しいかもしれないが、そう思う資格があるのは当世代真っ只中の人間だけだ。現中年世代は、どうして「自分たちが働くから、君たち若者はのんびりしてなさい」と言えないのだ?その為に今まで走り続けてきたのではなかなったのか?
ニートに小遣いを与え続ける親は、経済人としてはエラーかもしれないが、人の親としては何も間違ってはいない。親の最大の理想は、子供に楽をさせることなのだから。それを体現している親を批難する言われはないと思うのだが、どうだろうか。
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ニートの増加は、日本経済が既に老年期にさしかかった証なのかもしれない。しかし、それを憂うことに意味は無い。なぜなら、それは「私たちが求めてきた、望むモノが手に入る苦しみの無い世界」に辿り着いた証拠なのだから。少なくとも、それを否定し、マラソンを続けることに、意味は無い。それでもニートを否定するというのなら、いったい、何のために、誰のために走り続けているというのだろう?
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以上、ニート擁護論でした。
ただし、繰り返しますが、私は会社員であり、個人的にニートを認めていません。この意見は単純に「肯定」という立場に立ったと仮定して論を立てたまでです。
この意見を否定できれば、ある意味、それはニートを否定することになります。私はいつかそれをするつもりですが、どう出るでしょうか?