久しぶりに再プレイしてみよう②『はるのあしおと』

これまでプレイした作品を改めて振り返ってみようというこの企画、第二弾は『はるのあしおと』(minori)です。私にとって最も印象的だったゆづきシナリオを再プレイしました。
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結局、評価はA+(傑作)に据え置きです。この作品については、私がErogameScapeで付けた「79点」という点数が全てを表しているような気がします。
この点数は、「79/(100-20)」点なんです。
この作品は選択肢が四つしかないという完全にノベル化された作品ですが、序盤は共通です。その分岐に入るまでが全然面白いと思えないんですよ。
1stプレイではそれほど気にならなかったのですが、如何せん、序盤〜中盤にかけての主人公の姿は最悪ですね。教え子に手を出すことについて色々言われている作品ですが、それよりも、就職し働いている身として、主人公の仕事に対する考え方自体が嫌いです。…これほど嫌悪感を抱いた主人公は他に無いかもなあ。
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ゆづきシナリオへの分岐を選択した瞬間から、この物語の「色」は一変します。このシナリオは本当に素晴らしいです。
私はやっぱり、彼女のメンタリティに共通する部分があるんでしょうね?2/3くらいの部分ですが、これってすごく高い数字だと思います。そして、私はそれを「そういう時もあったな」という思いで見てました。私には、ゆづきの抱いた不安と諦観の「味」がわかるんです。
とはいえ、私がそれを「経験してしまった」ことは事実であり、同時に、私自身がそれをニヒリムズでもって苦笑してしまっていることもまた事実なのです。それは、私がそれだけ「大人=歳を取った」ということでしょうし、ゆづきほど私が純でない証拠なのでしょう。
なので、かえって、そんな彼女の姿は私にはとても眩しく見えました。終章は、伏線・演出ともに最ッ高の"物語"です。
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この作品は「絵が合わない」とのマイナス評価もあるようです。ですが私は、この作品…というよりこのシナリオはこの画でないとダメだと感じました。もっと写実的な、いわゆる「上手い」画を用いていたら、この作品は重くなりすぎると思うのです・
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では、先の点数のマイナス20点は何なのか?それはやはり、このシナリオで描かれた「成長」が、この作品の「テーマ」でないことです。100点満点になりようが無いのです。
和シナリオは、ゆづきシナリオと同じライターだけあって、ゆづきシナリオと同じ方向性・感性を持つ物語です。私自身にゆづきと似たメンタリティを感じたと先に書きましたが、和シナリオにも同じことは言えるのです。そう感じさせる時点でこのシナリオの勝ち。
ですが…この物語は智夏シナリオで閉じられます。序盤がつまらなく・主人公が嫌いと書きましたが、「成長物語」としての「冒頭の姿」であるからこそ、主人公のあの像はなんとか許容できてます。それが欠ける(ように見える)智夏との関係でこの物語を締め括られては…このエンドは「私に合わない」と感じざるを得ないのです。それは、「私のメンタリティとの共通項が無いから」。もちろんこれは、主観的な問題です。
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はるのあしおと』再プレイの印象はこんな感じでした。つまり、1stプレイ時の感想とほとんど変わりませんでした。この企画としては失敗なのかもしれません(笑)。