たぶん、殿堂入り作品についてなら、どこまででも書ける

ええと…某所でこのHPに触れていただいたようですので、その分のちょっと解説を。
『Forest』のあのくだりは、もちろん、初回プレイで私も違和感を感じた所です。ただ、この作品が「物語を語る物語」である以上、ああいう視点は結局無くすワケにはいかないのかな、とも思います。もっとも、「読者に不快感を与える覚悟の上」だと思います。それにいくらなんでも、下半身丸出しで『Forest』をプレイすることはないでしょうし。
Fate』の第二部に関しては、「起承転転結」なのが気になるのです。第二部の最大の見どころはシロウとアーチャーの戦いだと思いますが、その後にもう一つギル戦という「転」がくるのが気になったのです。
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で、『腐り姫』と『CROSS†CHANNEL』についてが本題です。
以下、『CROSS†CHANNEL』が好きな方はそれなりに覚悟を持ってお読みください。
ループものの主人公は「一人」です。並行世界ではないのですから。つまり、一人の主人公(♂)が、複数のヒロインを次々と抱くのが、ループものの定番なんです。ヒロインは自分一人だけが主人公に抱かれていると思っているのが大半ですからハーレムですね(笑)。
だからこそ『腐り姫』は、ヒロインの順番が完全固定なんだと思います。1<2<3…と、次のヒロインを抱くだけの「理由」が絶対に不可欠なんだと思います。最初に登場するのが「恋人」(つまり、最もHする理由の平易な存在です)。その後、従姉妹に半ば逆レイプされ(本人の意志が弱いのがポイント)、義母の誘惑を受け入れます(それまで芳野を「女性」と意識していない所がポイント)。それから、義妹・潤です。潤の描写は、彼女の順までの素っ気なさを逆手に利用した演出色の強い所です。彼女の描写はこれまでのいかなるヒロインよりも力強いのです。しかし潤は、蔵女の爪の前に姿を消します。同時に、その直前で、潤が実妹・樹里に対する妬みと恨みを口にするところがポイントなのです。
自分が「何であるか」を悟った五樹は、ここで時を遡り、まずは、芳野が父の亡骸を前に、樹里への復讐を誓う所へと至ります。しかし五樹は、そんな芳野を阻止しようとするのです。ここで、プレイヤーと五樹の感情は乖離します。先の潤のシーンから間が立ってないにも関わらず、五樹は全ての元凶たる樹里を擁護しようとするからです。
そしてついに、五樹は樹里の元へと至ります。もうここまで来たプレイヤーはわかっているはず。彼女こそが、五樹を最も熱烈に愛する存在であることを。そして五樹の頭に蘇る、最後の記憶「赤い婚礼」。それは、自らの手で実妹を殺した記憶。
ここで五樹は樹里を抱かないんですよ(もちろん、そんなシーンは描けませんがw)。少なくとも、その気は五樹にありません。兄を誰よりも猛烈に愛した妹と、妹を妹としてしか愛せなかった兄との悲劇の物語だと思うのです、この作品は。「ここで樹里を抱かない」ことは、これまで他のヒロインとは身体を重ねてきた五樹だからこそ、重いのですよ。
この記憶へ至る道程の、最も素晴らしき「魅せ方」こそが、この「繰り返す四日間」であったと思うのです。先にこの設定がありきではありません。
そしてもう一つ、「蔵女というヒロインは、五樹にとって、他のヒロインと比較してどの程度の重みにあるか」なんですよ。たぶん、「比べられない」と思うのです。いくら五樹でも、以前の性格と生活を残したまま蔵女を抱くほど浮気性ではないと思います。蔵女という存在は、簸川五樹にとって出会ったばかりのイレギュラーな存在のはずですから。だからこそ、五樹の「完全な覚醒」というロジックは、上記の、「ループであるがゆえのヒロインの順序」とはまったく別に蔵女の描写をすることを許したのだと思うのです。
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さて、ここまで私のかなり主観の入った評価ですが(笑)、こんな作品に過去最高の評価をしている人の『CROSS†CHANNEL』評です。もちろん主観です。
「ヒロインの順序が可変」ってのは、「黒須太一はどっちにも普通に手を出す」というように見えました。もっと言えば、「ヒロインを愛する理由がない」んです。黒須太一は、ループを自覚した後も普通にヒロインを一人ずつ手掛けていきますからね。それに、簸川五樹が樹里を抱かないことで逆に樹里を特別扱いしたのに比べて、曜子ちゃんの重みもちょっと足りなかったのではないかと(もうちょっと極端な描き方のほうが映えたと思います)。
もっともこのゲーム、ヒロインにはそれなりに萌えるんですよ。ほとんど全員に。なら、こんな縦の展開ではなく、フツーのよくある共通-個別パートの恋愛ゲーで充分だったのではないかとすら思います。
つうか、人気投票一位がミキミキってのはバランスとしてどうでしょう?彼女は順序的に最初でも最後でもない中間に位置するヒロインで、一本道のシナリオである以上、そこは中間の評価を与えられるヒロインの居場所だと思いました。
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さて、もう一つの論点「テーマ性」です。これについては、同じFlyingShineがS.M.Lブランド名義で製作した『CARNIVAL』、アレの前には全然及びませんね。
「とりあえず生きてる人、います? ……もしいたら、なんつうか、生きてください 死ぬまでは生きてください」と言う人が、あちらの世界に一人留まっては駄目なのではないかと思いました。結局この作品で、黒須太一は一度も現実世界に生きようという意志を見せないのではないですか?
まず今作には「群青学園」という「隔離された世界」が用意されています。もちろん簡単には出れないんでしょうが、彼らはそこに安息の地を見い出しているような気がするのです。
残念ながら、現実世界を生きるってのはトンデモなく大変なんですよ。それは皆さん誰もがわかってますよね?隔離されれば何より楽。そうはいかず現実世界を生きる上でも、流されてしまえば、ある程度は楽。周りを全然気にしなければ、それはそれで、楽。でも私達は自我を持つから、尚更辛い。そして人は仮面を被る…というのが、『CARNIVAL』という物語。
この作品には同ライターの小説版があります。本編にあまりに壮絶なエンドを与えた渾身の続編ですが、その中の主人公・マナブの手記の最後にこう締め括られます。

追伸 今までありがとう。
出来ることならば、誰も憎まずに生きてください

この言葉に込められたマナブの悲しみは、この作品と小説版を経験してハマった人ならわかってもらえるはずです。それが、「生きる」という本当の厳しささということも。
コレに比べたら、『CROSS†CHANNEL』はあまりに現実性が無っていうか…児戯だな、と。
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気が付いたらまたなげーなあ…。
自分ではかなりはしょったつもりなんだが…。
つーか、『CARNIVAL』小説版まで読んでないとどうしようもない…。
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最後に一言。私の付けている「C評価」って、思わずディスクをブン投げたくなるほどつまらない作品…ってワケじゃないです。エロゲーって、なんだかんだいってどの作品もある程度は面白いんですから。