第三位 『CARNIVAL』(S.M.L) もちろん小説版を含めて。

先の二作が、内容も素晴らしいが視覚演出や舞台設定の斬新さで強く印象付けているのに対し、今作はまさに「テキストの力」だけでここまで評価する一作。
特に真新しいモノは無い。さらに、サスペンスとしてはあまりにありがちな展開と真犯人。しかし、それからがこの作品の真骨頂である。各章の文体の書き分けは間違いなく意図的。第一部をして「文章が合わない」とこの作品を称する人は見事に術中にハマっている。だって、そう書いているのだから。「第二部」が始まった時の衝撃は忘れられない。そしてさらにその上を行く「第三部」。「仮面と不信の物語」はここに極まる。パケ画まで含むラストシーンの演出は素晴らしかった。
そして…問題の小説版。ここで私はやっと気付いた。今作から私が受けた強烈な印象の原因を。この作品は、私にとってあまりに「真っ正面」すぎた。だからこそ、私はその全体像がなかなか掴めなかったのだ、と。私的に、最も感情的な影響を受けた作品である。早い話が本気で凹んだ。