『この青空に約束を−』(戯画)中間感想⑤ 〜中間感想を書く醍醐味〜

奈緒子シナリオ、そして「約束の日」、そして、茜シナリオ(?)終了。
この作品プレイ済みの人は薄々わかっていたかと思いますが、私は今、昨日までの中間感想を読み返して可笑しくなってます。だって、このシナリオには(ある程度)在るじゃないですか。
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奈緒子シナリオ。
共通パートを進めるうちに思うところがあって、最後まで残していたシナリオでしたが、その目論見はたぶん間違ってなかったですね。
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「価値観の相対化が無い」「完璧なコミュニケーション」という点。この作品の「非現実味」と散々言っていたそれらについて、唯一踏まえているのが、このシナリオですね。なので、必然的に、最もよく描けているシナリオだと思います。全体的とのバランスを抜きにして考えればという注文が付くんですが、納得のいくシナリオです。
「なぜ主人公のことが好きなのか」、これもまた、ここまでには無かった視点だと思うのです。少なくともこの作品、寮に男性は一人で、他の男性は魅力的に描く気もありません。ここまで来て初めて、「まともな男性」を登場させたことは大きいのかな、と。だって、旅立った先で、ヒロイン達は、もっと多くの男性と出会っていくのですよ?
奈緒子は、「つぐみ寮」の建物自体への執着が無いんです。続く「約束の日」でもそうなのですが、彼女にとって大切なものは建物じゃないはず。3月に、実質的につぐみ寮が崩壊するまでを守ろうとした彼女。そして、その後、彼女は、旅立ち、そこで「彼女が残したかったもの」を待ち続けます。それは変わらない。安普請のアパートになっても、彼女が欲しかった「つぐみ荘」は、そこに蘇る。この作品は、唯一、「島外」を描く。その視点は、欠かしてはいけないモノなのではないかと思うのですよ。
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最後になって作品全体の印象を振り返ると、やっぱり『Forest』を思い出すんですね。私的に、越えることは出来なかったと感じることを含めて。繰り返しますが、『Forest』の前にこの作品はプレイしたかったです。
「約束の日」の後にあえて「茜シナリオ」を持ってきたところは、考え方として、非常によく似ています。あれは、主人公の「成長」を描こうとしたのではないかと。ただ、個人的には、主人公の「巣立ち」を描いてもよかったような気がします。そこは、都会と田舎の違いなのかもしれませんが。
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あと大きかったのは、『Forest』が「フィナーレはひとつ」である点。
この『この青空に約束を−』は、各シナリオ間に意外とまとまりがありません。どうやってレビューを書くか難儀するくらいに(笑)。締めはありますが、それは「総括」しません。並行性って現実とやや乖離しますし…。
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まあ、『Forest』との差は世代差なのかなあ。
『Forest』は、ヒロインがOL・医大生・イタメシ屋のフロアマネージャー・ソープ嬢だし。宮野伽子だけは同年代だけど、彼女の名前が「かこ」なのは偶然じゃないだろうし。
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最後に、どーでもいいことですがシステムおよびエロについて。
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インターフェイスを含めよく出来ているとは思いますが、肝心の機能が無い。それは、「Enterキー押下による中速スキップ」です。このゲーム、共通パートを随分挟むんで全文スキップにはできませんし、オートでは代用が利きません。
何をスキップするかというと、エロシーンなんですよ(笑)。主人公は没個性の存在じゃありませんので、言ってみれば、私以外の別な男とヒロインがセックスするを見せられても…全然面白くないじゃあないですか(笑)*1
あと、「次の選択肢までスキップ」が妙に遅い(機種依存かもしれませんが)。*2
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この作品、このシステム面が随分と褒められているんですが、それって何か違うんじゃないかとも…思ったり。
例えば、スキップ機能が褒められたって、それは作品に対する褒め言葉じゃないですよ。だって、「スキップを使う部分がある」ということじゃないですか?名作は作品に惹き込まれるからこそ、全部のテキストを読まされることになるはず。構成を考えたら、再読を強いられる共通パートなど「存在しない」方がよいのではないですか?理想は、「スキップ機能を一度も使わない作品」なのではないかと。

*1:エロゲの存在意義に関わる部分なんですが。

*2:ちなみに、『Forest』を出したライアーソフトは、バグメーカーとして名を馳せる一方で、「前の選択肢に戻る」「次の選択肢までの瞬速スキップ」「既読のみスキップ」「Ctrlキー押下による全文スキップ」を『ぶるまー2000』の頃から備えていたユーザーフレンドリーなブランドです。オートモードもこの前から付きましたし。