最高のシナリオ

エロゲに限らず、小説・マンガ・映画・ドラマ・コンシューマ等の全てのジャンルの中で最もシナリオの素晴らしいと思う作品は何か?と問われると、そりゃNo.1を一つ挙げるのはとっても難しいですが、少なくとも3本の指に入るのはコレですね。
『The World Is Mine』(新井英樹) ASIN:409152141X
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破壊と殺戮の王・モン。爆弾魔・トシ。怪物・ヒグマドン。阿部マリア青森県警捜査一課長・塩見警部(補)。警視庁警備局公安3課課長補佐・薬師寺善治。総理大臣・由利勘平。新聞記者・星野隆之。老ハンター・飯島猛。加害者の母・三隅沙也香。加害者の父・三隅忠俊。秋田県警本部長・須賀原譲二。母親・関谷潤子とその子。アメリカ合衆国大統領・ダグウット・ヘイズ。
物語は、一連の「トシモン事件」を中心にこれらの登場人物を多角的・多面的に描いてゆく。その密度の濃さは、少なくともマンガではこれ以上のモノは無いでしょう。この物語を週刊ペース(ヤングサンデー連載)で描いていたことは未だに信じられない。振り返ってみると14巻で収まっていることにも驚き。
新井英樹氏が、間違いなく画で人を選ぶマンガ家だということは否定しません。私もこの頃はヤンサンを毎週読んでいたはずなんですが、初見でしばらくこのマンガは読みとばしていました。ですが、それで切り捨てるにはあまりに勿体ない。というか、「この作品」はこの画じゃないと駄目だったのかな、と思います。
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最も好きな場面…名言・名場面を挙げれば列挙に暇無いのですが、特にトシモンを負う3人の警察関係者の描写は見事。
「人質を犠牲にしてでもトシモンを殺すことは是か非か…人として、警官として」
「人質の生命を最後まで守ろうとする」ヒューマニスト・塩見。「自分の娘が人質なら殺させないが、他人なら殺す」現実主義者・薬師寺。そして「人質が自分の肉親でも殺す」理想主義者・須賀原。3人は3人それぞれの「覚悟・信念」あるいは「性分」によって行動し…そしてそれぞれの結末を迎えてゆきます。
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最高でもたったの530円×14巻=7,420円です。エロゲ一本分の価値は十二分に在ると思います。興味がありましたらどーぞ。