『Hello Again』感想

(ほとんどそのまま本感想へ移行します。)
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うわあ…私は完全に誤解していたようです。枕流氏の処女作であるこの『Hello Again』(Active)ですが、昨日書いた「ハートフル」なんて先入観とは全然違いました。
以下、いろんな作品へのネタバレを含みます。
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私が氏の作品でプレイ済みなのは、『ねがぽじ』(ファンディスク含む)と『鎖−クサリ−』でしたが、この作品、『ねがぽじ』よりも『鎖』にずっと近いです。枕流さんの基本線は「ヒロインの意志」だったんだな〜と、今になって知りました。
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『ねがぽじ』は、こんなタイトルの割に、この三作の中では最もポジティブです。主人公・まひるの主観によって描かれるこの物語の中で、まひるは最初から最後まで善良な存在として描かれています。それは、香澄・透・美奈萌といった周りの登場人物達も一緒。この作品で描かれる「ネガティブ」は、全て彼らの「外側」の「無名の他者」によるものなのですよ。
それが、『鎖』は、その「ネガティブ」を「ヒロイン」の側に持ってきた作品です。自分の意志で行動し、時には主人公を殺してしまうヒロイン像。しかしそれには、「岸田」という明確な「敵」の存在があることもまた事実です。もし岸田が居なかったら、ああはならなかったんじゃないか、私は無意識的にそう感じていました。
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ですが…この『Hello Again』は、ちょっと毛色が違います。この作品で描かれるヒロインは、その本質として「ネガティブ」を持っているのです。
真沙魚・操&泉深・美津夜・詩歩・由真というヒロインのうち、詩歩はまだともかくとして、他のヒロインの描写は本当に予想外でした。彼女らには、主人公に見せない何かが存在しています。彼女らは本当に「黒い」。そこを微塵も否定していないんです。
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この作品、枕流氏以外の作品で似た作品を挙げるなら、『SWAN SONG』ですよ!?
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もちろんそれは、「当たり前」の話なんです。ヒロインに意志と意図があるなんてことは当たり前。むしろ昨今のエロゲがそれを全然感じさせていないとも言えます。
この人が『鎖』で恵というヒロイン像を描いたのはある意味必然ですし、私が彼女の描写に対して感じたコトは間違っていないと思います。むしろ、先に書いた通り「陵辱」という「逃げ道」が用意されている分、『鎖』の方が親切で救われているとも言えます。
繰り返しますが、私は枕流氏を誤解していたようです。この人はもちろんコミカルな描写も出来ますが、人の内面の「黒さ」を感じずにはいられない人なのかもしれません。そう、それは誰にでも存在しているのだから、そこから眼を背けてはいけない、と。
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さて、こんな人が作った『ToHeart2』が普通の作品であるはずはありませんよ!?いっそう楽しみになってきました。