90年代を実感できない私はまだまだヒヨっ子なのだろうか

『痕』(Leaf)レビューをUPしました。
作品としては、今日でも全然遜色ないレベルにはあるとは思いますが、私にとってのウケはイマイチでした。「フィクションすぎる」んですね。
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「面白いなあ」と思ったのは、ライター・高橋氏の最新作『リアライズ』が、この『痕』と正反対の方向性なんですね。「ビジュアルノベル」である点は非常によく似ているのですが、中身は全然反対です。「フィクション」としての完結よりも、その背景にある「現実」へのリンクを意図している作品になっているワケです。
この『リアライズ』こそ、私が「最も世間に評価されていない」と思っている作品*1です。マイナーな作品ってのは、意外と知っている人には高評価のことが多いのですが、この『リアライズ』はプレイしている人は相当数いることが推定できるにもかかわらず、評価がえらく低いんですね。ErogameScapeのYamさんくらいしか、この作品を褒めている人を知らないんですよ。アキバで1000円程度で投売りされているのを見るのは流石に心が痛みますよ。
確かに、全ては芝浦八重の包括する世界…という設定はわかりにくいですし*2、「エロゲー」としての形式を取っていないのでそれを求めていた人には確かに的外れな作品に映るんでしょう。
でも、あまりにこの作品は「読まれていない」のかなあ、と。「メタファー」という最大のキーワードに気付いている人の割合も、相当に低いのではないかと思うんです。
この『リアライズ』、この「メタファー」という点を踏まえれば、いくらでも深読みが利きます。なぜ修二は負かした相手のエゴを吸収し、それに苦しめられるのか。なぜ沙耶は負かした相手のエゴを吸収しないのに強いのか、等等…。
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そんなワケで、『痕』自体よりも『リアライズ』の方について語りたくなってレビューに修正も加えたんですが(笑)、高橋氏・Leafの両方の、ここ10年の「進化」を味わうことができたことは間違いなかったようです。

*1:次点は『家飛!』ですね。

*2:私自身、この作品の初読はB(佳作)評価にとどまってました。再プレイして二段階昇格したんですけどね。